約 349,547 件
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/253.html
魔物詳細最終階層・終わりと始まりの地 ※☆はレアモンスター、▼はエリアボスとなる。レアモンスター撃破で煌石+1、エリアボス撃破でエリア攻略となり、攻略したメンバーに報酬が入る。 ※●印のエリアは、◆のエリアを全て攻略しないと進むことができない。 ※攻略済みの場所は、エリアボスが出現しなくなり、報酬も得ることができなくなります。 ※攻略後の場所への再探索は、エリアボスの代わりに通常魔物が1体、ランダムでエンカウントします。 ◆??? ??? BOSS:??? 必須メンバー:??? 攻略メンバー第一回:烏月揚羽・柳茜・天瀬麻衣・鬼ヶ原空・幸村カヤ ●終わりと始まりの地(攻略済み) 最終階層にある、アドラメレクが待つ寂しき場所。 BOSS:創生竜アドラメレク 必須メンバー:柳茜 攻略メンバー第一回:烏月揚羽・柳茜・天瀬麻衣・鬼ヶ原空・幸村カヤ
https://w.atwiki.jp/orecaapplication/pages/682.html
パラメータ ツブレトマト 成長パターン 初期コマンド 覚える技 クラスチェンジ派生 解説 コマンドサンプル(【EXゲージ+n】型) 台詞 専用テキスト パラメータ 属性 火 性別 無 出現章 序章 クラス ☆ 種族 植物 入手方法 破戒僧キク+呪師ツクヨミ 黒魔法使いジヨン+暗黒司祭ジョンガリ アーサー+正騎士アーサー ジーク+風のジーク ラクシャーサ+狂戦士ラクシャーサ ゼロ+風魔の零 カブト+猛将カブト クワガ+勇将クワガ ロレル+踊り子ロレル 炎の戦士バーン+火炎の騎士バーン マジシャン+レッド・マジシャン ドラン+竜人ドラン ドーシュ+弩使いドーシュ パズ+悪魔剣士パズズ 黒炎の戦士バーン+獄炎の騎士バーン 炎の召喚士ヒート+火炎召喚士ヒート はぐれ勇者クルド+勇者クルド 下位EX トマトまつり 上位EX トマトフェスティバル 消費EXゲージ 3 形式 連打 ツブレトマト 成長パターン HP レベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 個 体 値 1 12 13 13 13 13 14 14 14 14 15 2 13 13 13 13 14 14 14 14 15 15 3 13 13 13 13 14 14 14 14 15 15 4 13 13 13 14 14 14 14 15 15 15 5 13 13 13 14 14 14 14 15 15 15 6 13 13 14 14 14 14 15 15 15 15 攻撃 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 個 体 値 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 4 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 6 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 素早さ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 個 体 値 1 77 78 80 81 83 84 86 87 89 90 2 78 79 81 82 84 85 87 88 90 91 3 79 80 82 83 85 86 88 89 91 92 4 80 81 83 84 86 87 89 90 92 93 5 80 82 83 85 86 88 89 91 92 94 6 81 83 84 86 87 89 90 92 93 95 初期コマンド ★ ミス ミス EXゲージ+1 EXゲージ+2 EXゲージ+3 EXゲージ+4 覚える技 単体選択攻撃 こうげき こうげき! ランダム攻撃 全体攻撃 防御 回復 強化 召喚 異常 EX増減 EXゲージ+1 EXゲージ+2 EXゲージ+3 EXゲージ+4 EXゲージ+5 EXゲージ+6 コマンドパワー増減 技変化 無効 ミス クラスチェンジ派生 ツブレトマト+スライム・シルバー→スライム・フレア 解説 オレカのモンスターの中では珍しい、敵として出現しないモンスター。ツブレトマトの他にもトマト系モンスターやレッドジェリー、不死鳥フェニックスなども敵として出現しないことが知られている。 体力と攻撃力が非常に低く、アタッカー適性は皆無。 しかし、 素早さは☆の中で断トツの1位。 全体で見てもダッキには劣るがスライム・マナと王子マルドクに並ぶ第2位。 EX技は 味方全員のHPを1にして 、味方全員のリールを2つ(超EXは3つ)上げる技。 言うまでもなくデメリットが大きすぎるので、あと1ターンで勝てるような状況でもない限りは使わないようにしよう。 コマンドサンプル(【EXゲージ+n】型) キャパシティはEXゲージ基準で12。 + 参考例 # ★ 1 EXゲージ+2 2 EXゲージ+2 3 EXゲージ+2 4 EXゲージ+2 5 EXゲージ+2 6 EXゲージ+2 安定性を優先する場合 # ★ 1 ミス 2 ミス 3 ミス 4 EXゲージ+4 5 EXゲージ+4 6 EXゲージ+4 # ★ 1 ミス 2 ミス 3 ミス 4 ミス 5 EXゲージ+6 6 EXゲージ+6 ギャンブルになるが、このような型もあり。 台詞 専用テキスト + 台詞やテキストを見聞きする方法 登場 カードを全画面表示にする 登場(BOSS) 該当ボスに挑む カットイン 該当カットインを発生させる 加入 カード入手画面またはとしょかんのモンスター図鑑でカードを全画面表示し、右上の♪マークをタッチ EX発動 EX技使用を指示する EX技 EX技を使用する 超EX技 超EX技を使用する 勝利 レベルアップする 撃破/ 戦闘中に倒される 撃破(BOSS) 該当ボスを撃破する 専用テキスト 該当する技を使用する 登場 「トォ~マトマァ~!」 加入 「トマッ!」 EX発動 「トォ~ォォォォォ…」 EX技 「マ~ママママママァ!」 超EX技 「マ~ママママママァ!」 勝利 「トッ…マッマァ~」 撃破 「トッマアァァァァ!」
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/100.html
福良練ストーリー内容 第一話【花を愛する人】 参加メンバー:福良練(メイン)・日野守桜(サブ)・桐石登也・白神凪・藤八沙耶・六角屋灼 帰宅途中、貴方達はふとした人だかりに出くわす。 福良練が住んでいる商店街の、花屋。 そこで練は以前、花屋の家族の代わりに店番をしていたという老人とあった。 その男性が、倒れていた。 おそらく、再度出かける花屋の家族の代わりに店番を申し出たのであろう彼だったが、誰も助けようとはしなかった。 貴方達が容態を確認しようとすると、近くにいた男に止められる。 なんでも、メガネをかけて髪がボサボサの男に誰も老人に触らないようにと言われて、彼は他の誰も触らないようにと気を使っていてくれたらしい。 そのメガネの男をハンターと思っていたらしい彼だったが、貴方達がハンターとわかればもう止めようとしなかった。 近くにいた女が練に触れて確認してみればいいと助言をしてくれたので、練が触ろうとしたら練の体に何かが入り込む感覚があった。 ちょうどメガネの男と身なりのいい男…は土御門伍代だったので凪達が詳しく聞くと、メガネの男はこの症状に詳しい人物らしい。 「呪い」。簡単に言えばそういうものらしく、下手に触るのは危険らしい。 メガネの男が解除のための陣を描いていると、練も触ってしまったことを申告。 彼は心底だるそうな顔をしながら、練も陣へと入れて儀式を行った。 こんな簡単なことで呪いを解いたようだが、詳しいことは聞かせてもらえず、また誰が呪いをかけたのかすら教えてもらえなかった。 練の呪い(触ったためについでに受けた)は解除されたはずだったが、まだ体に違和感を覚えながら帰路へとついた。 第二話【ヒラリアの遺跡攻略】 参加メンバー:福良練(メイン)・白神凪(サブ)・志島武生・月宮香蓮・藤八沙耶・福良練・柳茜 貴方達は西蘂町の平於山にあるヒラリアの遺跡へとやってきた。 第一層は以前、東雲直達が突破していたので、今回は第二層からになる。 第二層から第四層までは、花や場違いな回転ノコギリと言ったトラップがあり、それを何とか潜り抜ける貴方達。 第五層へやっとの思いでつくと、そこには祭壇があるだけだった。 かつて、ここで巨大な魔花と化したヒラリアの花と、別のハンターが戦ったようだが、現在は討伐され何も祭壇には無い状態。 そこで、白神凪は彼自身の中に住まう悪魔、ラウムの声を聞く。 彼の忠告通りに体を譲ると、ラウムは協力的で祭壇の空間へと手を突っ込み、異次元空間を引っ張り出した。 そのまま異次元空間を進むと、マート、ミルヒ、ヒラリアの三花があたりに咲き乱れる中心。階段を上がった先に椅子があり、そこに一人の少女が座っていた。 凪の体を借りたラウムは、その少女を見るなり襲い掛かるが返りうちに合い、ラウムのみを凪の体から引きはがされた。 しかし、少女―フェルゼと名乗った―の悪魔は、敵意を持っておらず、福良練の事を姫神の裔と呼ぶ。 彼女はただ対話がしたかった。 そして、外の世界を見てみたいのだと言う。 紅の商店街で、練にかかった呪いは確かにフェルゼの呪いで、ここへ来るように仕向ける呪いだそうだ。 もし誰かが来ようとするのを妨害するならば、やがて衰弱し死んでしまうような危険な呪いらしい。 だが、フェルゼ自身その呪いを無差別にかけたわけではなく、彼女が言う「小僧」と呼ぶ男が呪いを持ち去ったという。 それが巡り巡って練に渡ったわけらしい。 結局、ここまで来れば無条件で呪いを解けると言うフェルゼ。 必ずしも、凪とラウムの関係のように呪いに生命を脅かされる心配はなかった。 だが、彼女の事を想い、少しでも力になりたかった練は、悩みに悩んだ末にフェルゼと契約し、5年程の寿命を彼女にあげることにより、彼女と共にこの遺跡から外へと出ることを決意したのだった。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/260.html
エピローグ~one year later…4~ 大和から遥か東方、東晋。 大陸の広さこそ大和と同程度だが、東にある国の中で一番の力を持つ地と言えるだろう。 「確か、幾つもの国が合わさってできた国、だったか」 白神凪は、確認するように隣にいる眼鏡の大男に聞いた。 彼はAクラスハンターという肩書のみならず、神風学園大学部教授のため、そういった歴史関係も詳しい(主にそういった専攻だからでもあるが)。 「そうですね~。この東晋は古くから戦乱が続いており、その中で『晋』という国が数十年前に治めたため、国名も東晋に統一したようです~」 「その割に、余り統一感は無い気がしますね」 「ん~板垣君、よく気が付きましたね~」 板垣勝猛の言葉に、城ヶ崎憲明は頷く。 東晋の地図を取り出し、説明を始めた。 「確かに、晋は統一しました~。ですが、それをよく思わない勢力も多々いまして~。 これでも近年はマシになった方で、そりゃあもう統一当時は血で血を洗うような戦いが幾度も繰り返されたようですよ~」 「よくみたら、この地図…3方面に仕切られてますね」 「ええ、統治している国こそ地図でいう南西の『晋』ですが、北側の『圏』、南東の『涛』は有力な豪族として、かなり力を持っているようですよ~」 「…そうか、だから今はこの圏って場所にいるから、その圏って国の主張が強い場所になってるってことか」 「冴えてますね~白神君。その通りです~。ただ今は国ではなく、いち地方名となっているようですがね~」 彼ら3人は、涛の地から東晋へと入国。 それから北側経由で、晋へと進むルートを歩いていく。 涛の和っぽさとは違い、エスニックな様式の家や服装、果てには料理まで違う。 その不安定なバランスこそが、東晋の特徴であり魅力でもあるのだ。 ☆ 彼らが圏の地の北西部、山間を通っている時だった。 「ん?なんだ?」 「おやぁ~?」 「若い女性…みたいですね」 走って逃げているような一人の女性が、3人に気が付くと一目散にそちらへと方角を変え向かってくる。 「旅のお方…!お、お助けを!」 「落ち着いてください、一体何があったっていうんです?」 「そ、それが…」 「あれは…」 女性が説明をしようとした時。 凪が前方から来る3人の男達に気がついた。 なめし革で作った兜と鎧に身を纏った、こちらと同じ数の3人の男。 手には剣を持っており、兵士を彷彿とさせる容貌だ。 「そこのお前達。旅の者だな? その女は大罪人だ。こちらに引き渡してもらおう」 「い、嫌!」 女性の怯えように、勝猛と凪は顔を見合わせる。 そして男達に向き直った。 「ちょっと待ってください。いきなりそう言われても、そうですかと引き渡すことはできませんね」 「せめて理由を説明してもらえないすかね…?」 「そんな暇は無い。いいから早くこちらに引き渡すのだ!」 「いや、だから理由を…」 「二人共、ここはおとなしく従っておきましょう」 「え…?」 嫌がる女を、強引に兵士達へと渡す城ヶ崎。 勝猛と凪は腑に落ちない表情ではあったが、ここは異国の地。 旅人として来ているだけで、ハンター活動ができるはずもなく、仕方なく彼らは兵士の言うことに従う事にした。 「協力、感謝する」 「いやっ!!!いやぁー!!やめてぇー!!」 「ほら歩け!」 女の首に殺しかねないくらい、きつく締めた縄をかけると引っ張って連れて行く。 ―カシャ。 3人は後味が悪そうな表情をすると、まず聞いたのは凪だった。 「別に、理由くらいは聞いてもよかったんじゃないすか?」 「俺も同感です。若い女性の方が、ああして乱暴にされているのを見るのはちょっと、いい気分ではないですね」 「二人は助手として同行してもらっていますが、白神君は見聞を広めるため、板垣君は行方不明の父親の手がかりを探して同行したのでしょう?でしたら、あまり揉め事は起こさない方がいいでしょうね~。それに」 そのあとの言葉に、二人は驚愕の表情を見せた。 終わったはずの事件。 城ヶ崎憲明による著、『滅びの星ハミルトン(上中下)』の中に出てくるアドラメレク。 今となっては、御伽噺となったアドラメレクではあったが、こうして城ヶ崎により空想の存在として後世に語り継がれていくことになった。 そのアドラメレクに匹敵する悪魔の爵位を持つ存在。 一部研究家には、『三公』と呼ばれている、強大な力を持つ悪魔(アドラメレクは消滅したため、正確には二公だが)だった。 ☆ 公爵の爵位を持つ悪魔の一体、『オロチ』。 それは『魔の因子』と呼ばれる文様を与え、自分の眷属とすることで周りから命を少しずつ奪っていく。 眷属にされた本人に自覚はなく、人間が命を吸い尽くされるのは、それこそ毎日同じ家で生活を送ったとしても10年はかかると言われている。 自身に影響はないものの、魔の因子が発現した者が死ねばその肉体は魔の眷属として姿を変えるようだ。 「…まさかまた悪魔関係に巻き込まれるとはな」 「あはは~運命でしょうかねぇ~」 「自分にはそこらへん、よくわからないんですが…悪魔は消えたんじゃなかったんです?」 「正確には、大和・出雲・飛鳥を掌握していた悪魔、アドラメレクは消えたというのが正しいですね~」 「確か三公、だったか。一体がアドラメレクで、ここの東晋の国はオロチ、と」 三人は、女が連れて行かれた村へとやってきており、情報を集めていた。 意外な程、あっさりとオロチの名は出てくることになる。 それは、この遠雛(えんすう)村と隣村の呂善(ろぜん)村、それから大分二つの村から離れた所にある智凱(ともがい)村の3つの村がそのオロチ信仰に深く関係した村だからだ。 「遠呂智でオロチね…この様子じゃ、三つの村の頭文字もそれ由来か?」 「しかし、古くからの言い伝えで悪魔のオロチの名は簡単に出るものの、それぐらいですか」 「ふーむ。もしかしたら、そのオロチは直接は関わっていないのかもしれませんね~」 城ヶ崎の言葉に、二人は首を傾げる。 言いたい事は何となくはわかるが、現に魔の因子という物が出ている以上、アドラメレクのようになんらかの企みをもくろんでいるのではないのかと。 「どちらかと言えば、呪術に近い感じでしょうか。上条家が引き起こしたという例のアレですね~。元々、呪いは悪魔自身がもたらしていたモノですが、上条家が使っていた呪術という力は、悪魔の呪いをモチーフにしたというだけであって、元々の由来は東方から伝わったという話をどこかで聞いた事があります~」 「お前さん達、何かよからぬことを企んでいるのかい?」 その時、声をかけてきたのは60歳くらいの初老の男性だった。 城ヶ崎がひょえーと驚いた声をあげていたが、凪や勝猛が視認できていたため、彼が気づいていないはずがない。 案の定、彼は大げさに驚いた素振りをしつつポケットに忍ばせたボイスレコーダーをONにしていた。 「いや…ただの旅だし、好奇心ってだけでな。俺らの国にも呪術というのがあって、魔の因子…だったか?それが似てるって話をしてたんだよ」 「そうかい。あんまり深入りはしない方がええ」 「忠告、感謝しますよ」 凪は大和とは違う言語を、一つ一つ確認するように答える。 聞き取りは城ヶ崎が、最悪わからない部分は訳してくれるし、簡単な受け答えは可能だが『呪術』などと言う特異な単語の訳し方が未だに慣れない。 その辺りは、どちらかと言えば勝猛の方が得意だ。 もっと勉強するか…と立ち去ろうとした老人を見送ろうとすると、「お爺さん」と呼び止める声が後方からした。 城ヶ崎だ。 「一つ、よろしいでしょうか~」 「なんじゃ?」 「こちらの方、見ませんでしたか~?」 先程の兵士のような男達に、首を引きずられる女の画像を。 携帯のカメラ機能で、連れて行かれる時に撮影したようだ。 「いつの間に…」 「ああ、マオの事かい。彼女なら、先程戻り今は――」 「そちらじゃあ、ありません。私はこの男達の行方を聞いているのです~」 「「!?」」 一瞬にして張り詰める空気。 周りの通行人も、鎖鎌や刀を構えた。 「そういえば、あれだけ派手に女性を引きずって行った割には…」 「全然話題にもなってねえな」 「…やれやれ…そのまま気づかずにおればいいものを…。勘のいいガキは嫌いじゃよ」 老人のその言葉の直後、一斉に襲い掛かってくる村人達。 「おそらく、彼らは操られているだけでしょう~!板垣君、余り傷つけないようにお願いします~」 「キヨオキ!」 勝猛は人形を出すと、人形と共に地面を叩きつける。 すると辺りに超振動が起こり、村人の姿勢を不安定にし、更には転ばせた。 土御門流の武術の型である「波」。 文字通り、衝撃波や振動が特徴の型だ 「なんじゃと…!?貴様ら…何者じゃ…!?かくなる上は…来い、マオ!」 『シャギャー!!』 老人が指笛を吹くと、上空から巨大な漆黒の翼を持った化け物が降ってくる。 「先ほどの女性の成れの果て、と言ったところでしょうか~」 「教授…そんな悠長な事を言ってていいんすか?あの爺さん、逃げていくぜ」 「おやぁ~!?白神君、彼はぜひ捕まえてください~!」 化け物を呼んだ直後に、まるでチーターのような速さで逃げる老人。 老人らしからぬ脚力に呆気に取られて見ていたが、すぐに化け物の剛腕がとんできたため、回避をしつつそれぞれの行動を取った。 他の村人の相手は勝猛に任せて。 「ったく…人使いが荒いな」 凪は戦闘態勢を一旦解き、息を整えると辺りの風を自身へと集める。 次の瞬間、彼の体は白を基調としたライダースーツのような姿へと変化した。 「風神化…まさか現実に戻ってからも見られるとは~」 「悪いが話は後にしてもらうぜ。効果時間は1分も持たないんすよ」 そして連続使用はできないという欠点。 一日に一回、といった所だろうか、 もちろんあの異次元の頃よりも劣化した今では、前程の能力は出せないが、それでも圧倒的な速さを以て一瞬で老人に追いつき、前方を立ち塞ぐことは容易だった。 「な、なんじゃ…!?このワシが足で敵わないじゃと!?ぷぎゃあ!」 老人を風を纏った玉、風雪の玉で軽く一撃。 すると老人は吹き飛び、気を失った。 「おお~、やはり操られていましたか~」 「これで一安心…って所ですね」 勝猛と戦闘を行っていた村人も、バタバタと連鎖するように意識を失う。 そして、化け物は再び先程男達に連れ去られた女の姿へと変化し、女も意識を失って倒れた。 「生きてるのか…?」 「ふむぅ、どうやらそのようですね~。死んで化け物になったというよりは、魔の因子を暴走させられて化け物と化していた、といった所でしょうか~」 「すいません、理解できてないんですが…」 「安心してくれ板垣先輩。俺もだ」 城ヶ崎は一人で納得しつつ、彼女をおんぶすると宿の方へと向かって歩き出す。 「連れて行くんです?」 「女性をこんな所で、一人にするわけにはいかないでしょう~?さあお二人も手伝ってください~」 「いや他にも女はいるんだが…」 明らかに好奇心から連れていくつもりだ。 なぜなら、勝猛が戦っていた村人の女性には脇目すら振らないからだ。 二人は顔を見合わせ、やれやれというようにため息をつくと城ヶ崎へと付いていった――。 ☆ それから色々あって、この三村の問題を解決した三人。 帰りの船の中には、今回の件で助けたマオという女性が同行していた。 「しかし、あんたも来るのか」 「故郷はあの一件で、もうありませんから。城ヶ崎さんの所でお世話になろうと思います」 「そうですか。それはよかったですねぇ」 行きとは違い、一人増えた船内。 無事、とは言えないものの、オロチの復活も阻止し謎の教団の企みの一つを潰した今となっては、微々たる事とはいえよかったと思う。 何より、被害者だった彼女が生きていたのだから。 「そういえば…板垣さん、私が小さいころ、どこかでお会いしていませんか…?」 「マオさんと…ですか?失礼ですが、一体お幾つで?」 18、というマオに、若いな…という反応を見せる一同。 そして間違いなく、勝猛は彼女とは会っていない。 東晋から彼女は出た事が無いと言うし、勝猛もまた、今回が初の東晋だったからだ。 「人違いかもしれませんね。雰囲気というか、今はもっと老けていてもおかしくないですし…」 「…まさか、ね」 勝猛の旅の理由である、父の足跡を探す事。 他人の空似かもしれないが、もしかすると異国に足を運んでいる可能性もあると、彼はここで改めて考えた。 「さて!一先ず話は後にしましょう~!久方ぶりの大和が見えてきましたよ~!」 無事帰国した3人と女性一人。 まさか、これが縁となり城ヶ崎の旅にこれからも同行するとは、今の二人には想像もつかない事だろう。 そして小説としてこの冒険が、多大な脚色を加えつつ発表されるとは、夢にも思わなかっただろう。 一先ず、彼らの『二つ目』の冒険はこれでおしまいとなる。 次の冒険も、そう遠くない日に――。 ◆城ヶ崎憲明 異次元帰還後、定期的に異国へと旅に出る事になる。 そこでの経験を活かし、冒険を小説として書き起こし発表。 代表的な作品は、『滅びの星ハミルトン(上中下)』『東晋の黒き悪魔(上下)』『烈火の砂塵原』『空の檻歌』。 彼の小説では、彼をモチーフにした『ジョウ』というキャラが登場するが、一作品を除いて『ラギ』や『タケ』の人気キャラのどちらかとの冒険しか小説に書かなくなったのは、単純にジョウ一人の冒険作品が爆死レベルの売れなさのためだ。 ちなみにその小説のタイトルは『エジンバラの巨獣』。 ジョウが52歳の頃の冒険を描いた最後の作品『幻の古都スノーバレー(上中下)』まで、20余冊もの小説が書かれたという。 余談だが、勝手にモチーフとしたキャラを出すため、城ヶ崎を訴える人もいたとか。 ◆板垣勝猛 異次元帰還後、ハンターとして茜ギルド所属としてそのまま活躍を続ける。 一方で、同じハンターで任務中に行方不明になった父親捜し、今回の城ヶ崎の冒険に付き合った事が切っ掛けで、今後も深く関わっていくとは夢にも思わなかっただろう。 彼をモチーフにしたキャラクター『タケ』が登場しているのは8作品あるが、中でも『東晋の黒き悪魔(上下)』『遠き地のフラメンコ』『灼眼の紅魔』は彼の父親関係の話も少しされており、彼の知り合いでもある、とある宮廷魔術師からの他愛もない依頼が始まりとなり、壮大なスケールで描かれた『異界の月の葬送曲(上中下)』で再会を果たす頃になるが、現実ではどうなったかは誰もわからない。 また、最終巻である『幻の古都スノーバレー(上中下)』では、東晋の黒き悪魔以来の競演となったもう一方の人気キャラクター、ラギとコンビを組む話となっているため人気も高い。 ◆白神凪 異次元帰還後、紅を中心にハンターとして活動を行う。 一方で異国を主とした冒険を城ヶ崎と行うようになり、彼の書く小説の人気キャラクター『ラギ』のモチーフとなるくらい、一番城ヶ崎と同行した数は多い。 14作品を『ジョウ』と共にし、『タケ』と共に相棒論争が行われているとかいないとか。 彼の出る作品は、一作目の『滅びの星ハミルトン(上中下)』とのキャラとの再会も多く、中でも彼のライバルでもある飛鳥のハンター『トール』と絡む『水底のマージナル』。 出雲支部のハンターで戦乙女と呼ばれている『スカーレッド』との共闘を描く『烈火の砂塵原』。 『タケ』との久しぶりの冒険を描いた『幻の古都スノーバレー(上中下)』が特に人気を集めている。 また、彼の出る作品は料理が特に描写される事が多く、食い倒れの旅と一部では言われている。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/272.html
エピローグ~one year later…16~ 桐石登也や天瀬麻衣達の船が沈没した数日前。 豪華客船エルスール号に、一人の男が乗船していた。 男は夜の甲板に出ると、人気が無いのを確認して背後を振り返る。 「よう、会いたかったぜナンバー5」 「気持ちが悪い台詞は辞めてもらえるかしら?」 ナンバー5と呼ばれた少女は、大気中を急速に冷やしていく。 それはカノンが見せたような魔術と似ているが、それより遥かに上回る程の広範囲で、船の事などお構いなしに全てを凍りつかせていく。 対峙する男、水鏡流星は鼻で笑うとナイフを取り出した。 「悪いが、お前さんと心中する気は全くないんでな!」 「どこに投げているの」 明後日の方向に飛んでいくナイフ。 だが次の瞬間、ナイフは空中で制止し、反転して少女へと向けて奔る! 「だから、どこに投げているのと聞いているの」 しかしそれも焼け石に水。 彼のナイフは彼女に当たる前に凍り付き、粉々に割れてしまった。 それでよかった。 少女は、失態をしてしまった。 「!?…ああああああ!」 「激痛を伴う猛毒。ま、普通の毒ならお前には全く効かないんだろうが、これは特別性だ。すぐに家に帰ってママにでも解毒してもらうんだなfunf」 「こ…の…!できそこないの癖に…!」 「おやァ?毒の配分間違えてましたかァ?」 「いーや、問題ねーよ美作」 少女の背後に、いつの間にかにたにたと下卑た笑いを浮かべている男がいた。 砂金美作。 彼は大和である事件で消息不明になった後、飛鳥の海岸沿いで漂流してた所を水鏡に拾われ、命の恩人という事で同行している。 今現在の水鏡の最強のパートナーだ。 ちなみに助けたのは俺だという事で、敬語無しの対等な関係と水鏡が勝手に決めている。 「いやァ、問題大アリですよォ」 急に両手を挙げる砂金。 砂金は水鏡の投げた、現在進行形で毒をまき散らしているナイフを突きつけられていた。 「大体、お前の毒ってこの範囲だろ?…今回は痛み分けってことで、大人しくお前らも退いてくれないか?」 「…やってる事と言ってる事が、あべこべすぎませんかァ?」 「…分かったよsechs、俺の方が負けだ。美作を解放しろ。その代わり、もうfunfには手を出さない」 「話が分かるね」 人質交換。 まず少女から水鏡が離れる。 すると、sechsという男が毒が蔓延しているナイフごと握り潰した。 毒はピタっと止み、funfよりも格の違いをまじまじと見せられる。 「…面目ございませンねェ」 「気にすんな。どーせあの女の事だ」 砂金と水鏡は、解放されてすぐ、体勢を整えじりじりと近づいてくる少女に押され、船の端まで追いつめられる。 funfに手を出そうものならsechsに迎撃されるだろうし、逆なら勝てる気がしない。 「俺らはfunfに手を出さない。お前は美作を解放する。ったく、割りにあわねーっての」 「選ばせてあげる。氷像になるか、大海原のど真ん中で漂流するかを、ね」 背後は海。風も強くなり、この辺りで有名な台風、ティフォーンが来そうだ。 ついてねーな、と小さく呟くと、砂金の首根っこを掴んで海に向かって飛んだ。 「もし生きて帰ったら、地獄のダンスに招待してやるよ!」 「ちょっとォ、また漂流ですかァ!」 「男の子なら我慢しろ!」 ドボン、と二人分の水の波紋が作られたのを確認すると、funfは沈んでいく水鏡達に追い打ちのように氷塊を生み出し飛ばした。 暫く待つが、彼らは浮かび上がってこない。 となると、死んだか『あの地へ』引き込まれたかのどちらかだ。 おそらく水鏡もこの海のポイント通過を見越して、今funf達をこの甲板へ誘い込んだのだろう。 「永久の箱庭から出る事ができたなら、その誘いに乗ってあげましょう」 とfunfは笑って、客室へとsechsと共に戻って行った――。 ◆水鏡流星 異次元帰還後、各地を転々と渡り歩き『組織』に対抗するべく機会を窺っている。 途中、漂流している砂金美作を助けた事が切っ掛けで、彼が水鏡の旅に同行してくれるようになったため寂しさは無い。 funf達に襲われ、海に飛び込み漂流した先で再び悪魔を巡る大きな事件に巻き込まれる事になる。 ☆ 出港の日。 メロウの港に停泊している豪華客船エルスール号の桟橋に、荷物を持った天瀬麻衣、桐石登也、烏月揚羽、志島武生の四人は、見送りに来た面々に囲まれていた。 「久遠さん…怒ってる?」 「別に」 麻衣に直接頼まれ、既にハンターではない揚羽と武生。 それどころか、揚羽は手配されている身。 だから心配していると思いそうだが、実は違う。 彼女のお腹には新たな命が宿っているのだ。 「でも、なんだかまた大きな事にマイティが巻き込まれそうでさ…。大丈夫、すぐ戻ってくるから!」 「期待しないで待ってるよ」 「ひっどーいっ!」 そんな他愛ない喧嘩をすると、お互いにふっと微笑んだ。 その後ろで、この日のためだけに飛鳥にやってきた紫堂陽人がジト目で二人を見ている。 「イチャつくのはいいんだけど、君達犯罪者だからね?周りの目も気になるし、もっと遠慮してね?」 「あ、いたの、はるちんっ!?大丈夫だって、わかってるよ!…わざわざ見送りに来てくれてありがとね」 「はぁ、づっきーは犯罪者になるし、こんな場面由貴ちゃんがみたらなんていうか…」 「大変だね」 「誰のせいだと思ってるんですか!!てか本当に犯罪者の久遠…さん?」 どうやっているのかはよくわからないが、祈那の光の魔導の力で、一部の人間以外には久遠の顔に見えていない状況らしい。 揚羽にとってはきちんと久遠が見えているので、そこらへんの事はよくわからないが、陽人には別人と揚羽が話しているように見えているようだ。 「久遠さんも、ありがとう」 「メロウに用事もあったからいいよ。行ってらっしゃい」 「すぐカッとなって暴力揚羽になるんだから、冷静さを身につけてこいよー!」 「えへへ、行ってきます!…はるちんは帰国したらグーパンね!」 「ひぇぇ…」 嬉しそうにそう返すと、揚羽は桟橋から船に上がる。 手を振りつつ、他の者が乗るのを待ち。 ◆紫堂陽人 異次元帰還後、紅のハンターとして相変わらず健闘中。 Cクラスハンターになったのを切っ掛けに、教師の資格を取り神風学園の教師を目指して勉強も頑張っているようだ。 ☆ 「あー…えっと」 「…別に無理して話さなくてもいいぞ」 「む、むむ無理なんて…してないですー!」 一方では、武生が英カリンと来海セナと会話していた。 …と言っても、接点があまりないため、ぎこちなさが誰から見ても明らかだったが。 「蒼氷さんの見送りだろ?あっち行ったほうがいいんじゃないの?」 「蒼氷先輩は、エスタルドのお偉いさんと話してて見送りできそうにないから…って違うっすよ!?俺達は志島さんを見送りに…」 それでも見送りに来てくれた二人に、感謝の意を込めて笑うと二人の頭を撫でた。 自分を見ていた水鏡流星も、こんな感じだったのかな、と思いながら。 「そういや、英は行成と連絡とってるんだって?」 「あ、はい。ハナちゃんと、あの異次元空間で仲良くなって…今はお互い忙しいので、来年辺りにまた大和に行こうかと思ってます」 「いいんじゃないか?異文化交流。来海は?」 「俺は別に、連絡とってる人とかはいないっすけど…」 「てっきり、ヨミ辺りと今でも連絡とってるのかと思ってた」 と言うのは武生なりの冗談だが、誰かしら連絡をとってるものと思っていたから意外だった。 そういえば、彼も大和に帰国していた時に、安全祈願のお守りを買うのを忘れていたのを思い出した。 藤八沙耶の神社で買おうと思っていたので、やっちゃったな、と思いつつ自分のポケットを探る。 「じゃ、はい」 「え?なんですかこれ」 「ナイフ」 いやみたらわかるし…と苦笑するセナに、武生は笑う。 かつて水鏡から託されたように、こういう縁も面白いだろうと。 「また再会したら、返してくれればいいよ。いらなかったら棄ててもいいし」 「はあ…」 と、出港の合図が。 そろそろか、と武生は船へと上がっていく。 「志島さん!」 セナに呼び止められ、振り返る。 何を言うか決まっていなかったのか、暫しの沈黙。 「行ってらっしゃい!」 「行ってきます」 ふっと笑って返すと、愛車に背中を預け、手を振る彼らに手を挙げた――。 ◆英カリン 異次元帰還後、軍学校を卒業し軍人に。 大和にいる友人に、時折会いに行っている。 ◆来海セナ 異次元帰還後、軍学校を卒業し同じく軍人に。 志島武生と今回の縁がきっかけで、数年後、彼のレースを見に行くことに。 ☆ 「麻衣…気を付けて行ってきてね」 「なんなら寂しかったら俺が一緒についていくよ麻衣たん?」 「ファニー…一度大和に戻ったんやなかったの?」 ファニー・マッドマンの言葉に、麻衣は呆れた視線を送りつつ「今日は麻衣たんのお見送りに、特別に」と照れながら返す相手に、内心はわざわざ飛鳥まで見送りに来てくれた事に少し感謝しつつも、それを表に出さないようにする。 牧本シュウの方を振り返ると、少し笑んで見せて。 「シュウも私がいない間、元気にやっててね。一人だとバランス悪い食事ばかりになるし」 「ケッ!人前で見せつけてくれますなあ!!夫婦トークとか死ね!」 「そ、そういうつもりじゃないんだけれど…」 心配したつもりが、心配し返されたシュウは悪態をつくファニーに苦笑を返しつつも、少し沈んだ顔になる。 どうしようかと迷っていたようだが、決心したように口を開いた。 「ねえ、やっぱり僕もついて行った方が…」 「ダメだよシュウ。明日から1ヶ月の間、大和であった災害復興支援に行くんでしょ?救助の人手は多い方がいいし、私なら心配いらないよ」 「そうですよ。俺達の分まで頼みますよシュウさん!」 麻衣だけでなく、登也にも頼まれて目を閉じ頷くシュウ。 笑みを向けながら、もう一度強く頷き。 「…うん、そうだね。麻衣達も、気を付けて」 「うん、じゃあ行ってくるね」 「…ファニー、どうした?最後に最愛の天瀬さんに声かけなくていいのか?」 麻衣とシュウが旅立ちの挨拶をしている最中、茶化すように黙っているファニーに声をかける登也。 しかし、彼が麻衣に掛けた言葉は予想外の言葉だった。 「おそらく、そろそろ事件。俺は手助けできないけど、無事を祈ってるよ麻衣たん」 「事件?それってどういう…」 「俺とめっちゃ仲悪い四人の悪魔。何も無ければそれでいい」 「もっと、確信を突いた内容で言ってくれよファニー」 登也に、目を細めて見るファニー。 そして、じゃ。と最後に手を挙げると去っていく。 「なんなんですかねぇ、ファニーの奴」 「まあ、大体の想像はつくけど」 麻衣は自分の聖痕に触れると、そろそろ出向の合図が鳴ったので、桟橋から船に向かう。 登也も一足遅れて、続けて上がっていく。 途中、呼び止められた気がして一度振り返り、意外な人物を見つけて笑みが零れ。 「麻衣!行ってらっしゃい!登也も!」 「行ってきます、シュウ!」 「シュウさんも頼みましたよ!行ってきます!!」 登也はこの港に響くような声を張る。 おそらく、その声は『彼』に届いただろう。 こうして、皆を乗せた船は出港したのだった――。 ◆天瀬麻衣 異次元帰還後、大和で医師免許取得のため勉強を再開。 無事合格した後、飛鳥に渡り牧本シュウに会いにいく。 今回の事件により五ヶ月程消息不明になるが、帰還後は飛鳥ギルドの救護班に移籍し、最終的には医師免許を活かして開業をする。 ☆ 太陽の光が照らしつける。 波の音が耳を掠める。 目を開けると、何処かの砂浜だった。 桐石登也は砂を吐き、ゆっくりと起き上がると辺りを見渡す。 「え…?なんだここ…?カノン!」 登也の声に、名前の主の反応は無い。 蒼氷カノンが別のメンバーと合流したとは知らず、登也はつい先ほどまでの出来事を思い返した。 確か、カノンが暗殺者に襲われていたのを助けた。 そう思ったら、ティフォーンと呼ばれる台風に巻き込まれて…。 考え込んでいると、足元に板金が流れ着いた。 その金属には『Elsur』と書かれている。 エルスール号ので間違いないようだ。 「マジかよ…漂流、ってことか…」 おそらくあのティフォーンで難破したのだろう。 だとしたら、一番生存の可能性が高いのがカノンだ。 ハンターカードが無くなり、水中で呼吸ができなくなった今、彼女が水中でも呼吸が可能な魔術アイテムを持っているからだ。 そうなると、彼女も同じようにこの地へ漂流しているかもしれない。 最悪の可能性は考えたくはないが、他の者も同じように漂流している可能性だってある。 登也が無事に漂流…というのも変だが、こうして今、この場に立っているわけなのだから。 「だとしたら、ここで立ち止まってても始まらねぇな…!」 最悪な事に、彼の武器『ブラックドック』は彼の手元には無い。 此処からは体術と魔術で切り抜けるしかないだろう。 自分の現在の状況を確認し、砂浜を駆けていく――。 ☆ 10分くらい走りぬいただろうか。 思ったより体力が落ちているようで、既にかなり息切れをしている。 しかし走り続けた甲斐もあり、海岸線が終わりを告げ、深い森への入り口に差し掛かろうとした時。 登也の周囲を囲む気配を感じた。 「グルルル」 「…ま、当然魔物もいるよな!」 4体程の狼型魔物。 見た事の無い種類だが、土地勘の無い森に誘い込むわけにいかず、また海岸沿いで見晴らしがいいこの場所では、逃げきるのはまず不可能。 戦うしかないだろう。 先手必勝と言わんばかりに、貫糸を一番手前の狼に発動しようとしたが、彼の魔術は発動しない。 「…な…?!」 「グルァッ」 一瞬狼達も構えたが、何も起きない事を確認すると手前の狼が登也を襲う。 間一髪、回避し狼の頭を拳打で叩き落す。 「グルルルル…」 「うおっ!?なんだこいつ!」 普通の狼なら、登也の一撃で落ちるはず。 雑魚魔物の一種と思われる魔物の癖に、異常な耐久力と言えるだろう。 「なぜかは知らないが、魔術が使えないとなると…体術で切り抜けるしかねえよなあ!」 一斉に跳びかかってきた二匹を、一匹はいなし、もう一匹は近くに落ちてた大きめの岩を口に突っ込んで口を閉じれなくしてやる。 その際腕に傷ができたものの、かすり傷レベルだ。まだ戦える。 口の岩を取ろうともがいている狼の頭上に蹴撃を放ち昏倒させる。残り三匹。 「くそっ、きついな…」 「ガルァッ!」 体力が落ちるのが早い気がする。 先程まで走っていたせいか、それとも漂流で体力が奪われていたのか。 三匹同時に跳びかかってきた狼達に、一匹は回し蹴りで対処。倒しきれてはいないが、遠くに吹き飛ばしたため少し余裕ができる。 残り二匹を倒すべく、すぐに体勢を戻そうとする登也だったが、その場にずっこけた。 思った以上に体力の消耗が激しく、疲労で体が思い通りに動かない。 「グルルルル…」 「ハハ…こんな狼風情にやられるなんて…カノンに申し訳が立たねえよ!」 倒れこんだ登也の体が、狼二匹に押さえつけられる。 そのうち頭の方にいた一匹が、登也の喉元を食いちぎろうと牙を突き立てようとした瞬間を見計らって、登也はヘッドバッドを狼に繰り出した。 さすがの狼も鼻骨をやられたせいか、苦しそうに暴れ出す。 だが、もう一方の狼は足を狙って牙を突き立てようとした。 足をバタつかせても、器用に回避する狼。 もう一匹の状態を見たせいか、頭に近づくことはしない。 「獣の癖に知恵が回るなあ…!」 回し蹴りで跳ばした狼がいつの間にか登也の腹付近にいる。 これで1対2。 絶体絶命を覚悟した時、錆びた剣が飛来し腹傍にいる狼を貫いた。 「これを使え!」 「お前…!?…今は礼を言っておくぜ!」 声のした方を見ると、そこには予想外の人物が立っていた。 すぐに右手で狼に突き刺さっている剣を抜き、横一閃。 ウバルはもちろん、諏訪戒人にも訓練で教え込まれた剣術。 使う機会は無いと思っていたが、意外にもその機械は巡ってきたようで。 足下にいた狼には回避されたが、回避したのを見計らい助けてくれた人物が双刀で切り刻んだ。 どうやらいつの間にか残りの一匹もその人物が片付けてくれたようだ。 「ふう…何とかなったな…。ありがとう。でも、なんで助けてくれたんだ?ええっと…」 「エスタルド軍機密部隊、ダンテ・トルナード二等兵だ」 素直に言ってくれちゃうんだ!?って突っ込みたかったが、まあ助けてくれた相手に無粋だと思ったので言わず、自分も名乗りながら差し出してくれる手を取り立ち上がる。 「桐石登也。ハンターだ」 「ほう。ハンターとは珍しいな。飛鳥でも最近、ハンターギルドができたとは聞いたが…」 「知ってるのか?って、外国語が上手いね」 普通に大和語――というと同じ言語の飛鳥や出雲の人に怒られるかもしれないが、それで話が通じる事に驚きつつ褒める。 すると男は得意げに鼻を鳴らす。 「俺は軍で一番頭がいい。これでも世界十八言語のうち十一をマスターしている。ただし古代語は除く」 「お、おう…」 変わった奴だなあ、と思いつつこれからどうする?と自然に聞いてしまった登也。 一度は命を狙われたとは言え、こうして和やかなムードなら殺しに来ることは無いだろう。 「そうだな…キリイシ、と言ったな。俺もついて行こう」 「俺としちゃあ助かるんだが…その、いいのか?」 「何がだ?」 本当にわかっていないようで、不思議そうに聞き返す相手に「いや、なんでもない」と笑って返す。 これから深い森に入るというのだ。仲間は多い方がいい。 暗殺者として裏切る可能性があるとしても、だ。 「…なあ、もし暗殺対象を見つけたらどうするんだ?」 「愚問だ。その時は再度暗殺を実行するだけだ。それが俺の任務であり、使命なのだ」 余程暗殺者に誇りを持っているのか、得意げに語る相手。 まあ嘘をつかれるよりは素直でいいか、と諦めながら、彼と共に深い深い森の中へと登也は進んでいった――。 ◆桐石登也 異次元帰還後、飛鳥ギルド支部へと移籍。 大和には足しげく通い、ウバルとチェス勝負だったり、天城宗次郎に面会だったり、小此木剛毅や諏訪戒人に訓練をつけてもらっている。 蒼氷カノンの依頼により、護衛として今回の件に同行。 漂流に遭い、5ヶ月間行方不明となる。 最終的なハンタークラスは「A」で、晩年は後輩の育成に励む。 「白帝王」「雷帝」「撃墜王」と様々な異名を持つくらい、生涯をハンターへと捧げていた。 ☆ 「もっと全力で走れよ武生!」 「やってるよ!ってか無理に二人乗ってるからスピード落ちてるんだよ!」 武生の愛車を、二人乗りで走らせる。 一人漂流していた武生を、水鏡が見つけたのが事の始まりだった。 感動の再会もあったもんじゃなかったが、彼は巨大な竜に追われていた。 大和の五大竜とは違い、知能などあったもんじゃない、野生本能しかない竜に。 「おーおー、昔は可愛げがあったってーのに、今はこんなになっちまってからに」 「水鏡さんのお陰でね」 お、言うじゃん。と水鏡は笑うと、ナイフを取り出して竜の目をめがけて投げる。 見事命中させると、竜は怯み追ってくるスピードが落ちた。 「っし命中!今がチャンスだぞ!」 「了解!」 ある程度振り切ったのを確認すると、山道をそのまま下り続ける二人。 会話をする時間はあると判断したのか、走行したまま水鏡が武生に叫ぶ。 「そういや、お前のレース見たぞ!素人な感想しか言えねーけど、よかったじゃん!灼の曲か?お前ら有名になったなあ!」 「それはどうも!それよりも、ここはどこなんだ!?」 「知らねー!美作も無事だといーんだけどなー!!」 「え!あの人もここに来てんの!」 「多分な!つーか俺にはお前のバイクも一緒に来てんのが驚きだわ!」 漂流物として、武生が流れ着いた海岸に一緒に流れついていた彼の愛車。 と言うより、愛車の積み荷を守るように抱えていたから、積み荷が浮き輪代わりになっていたのかもしれない。 「商売道具だしね!」 「言うじゃん武生!今はそれのおかげで助かったぜ!」 ドゴォン、という轟音と共に、竜が跳んできた。 一度何が起こったのかわからず、水鏡が振り返り、叫ぶ。 「武生!もっと出せ!!追いつかれるぞ!!」 「やってるってば!」 「って前!!崖!!」 「…しっかり捕まっててよ!」 バイクを少し右側にあった段差から跳ばし、向こう側の崖に着地する。 しかし、それでも竜は跳び越えて追ってきた。 「死ぬかと思ったわ!ってかしつけーな!!」 「なんとかならないの!?」 普段ならば、サウザンドフラクタルですぐに仕留めるはずだった。 だが、この地はどうやら魔術も特殊技も使えないらしい。 簡単に言えば、レベルが今までが100なら1になったような感じだろうか。 身体能力も基礎的な部分はそれなりにあるものの、日々魔力を運動能力に変えている部分もあったため、今までより圧倒的に能力が落ちているのを二人は実感していた。 「まあ任せな!」 そう言って取り出したるは、やはりナイフ。 また目を狙うのかと問い質そうとした時、懐からもう一つ小瓶を取り出し、走行中のバイクの上で器用にナイフの先端に塗っていく。 「…それってまさか!」 「その通り!分量は美作に聞いてるから、こんなのが目にあたったらそりゃあもう苦しいはずだ!」 「ざっくりしすぎててよく分かんないんだけど!」 「猛毒ってこと!」 と言った瞬間、一滴地面に落ちる。 シュワーという音と共に地面が少し溶けた。 「バイクの上に落とさないでよ!!」 「心配すんな!大丈夫だって!武生、Uターン!」 チラチラと水鏡を見つつ、Uターンする。 目の前には大型の竜。 「覚悟決めろよ武生!」 交差する瞬間、水鏡は再度器用に竜の目めがけてナイフを投げる。 そして、武生も竜の足の隙間を縫うようにバイクを走り抜ける。 「グギャアアアア!」 ナイフは見事に命中し、竜は悲鳴をあげその場に倒れた。 「っしゃあ!」 二人は歓喜し、ハイタッチをし勝利を喜んだのだった――。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/208.html
8月18日午後21時30分。 事件の舞台となった坂木家の前では、白神凪と桐石登也の二人が野次馬を家の中に入らないようにと食い止めていた。 そこに、メールを出した時には既に葵のネットカフェからリニアでこちらに向かっていた向坂維胡琉が合流する。 「危ないんですって本当に!!」 今だけ、一人で野次馬を食い止めている登也を横目に、維胡琉へと凪はこれまでの状況の説明をした。 「そっか。なら回復手がいるよね」 「ああ、向坂先輩が行くなら問題ねぇな」 実際に、この中で簡単に回復行動を行えるのは維胡琉のみ。 ここに来るまでに応急キットを手に入れた登也、盾等の補助行動は得意だが、治療には最適ではない凪。 確かに鬼ヶ原空の怪我は軽くはない。応急キットなどでの手当ては必要だろうが、だからと言ってモタモタしている暇もない。 空だけでなく、要救助者がまだこの中にいるからだ。 「この人だかりは、俺が何とかする。向坂先輩は登也のヤツと一緒に中へ先行してくれ」 「わかったわ。…本当に一人で大丈夫?」 維胡琉は頷き、一度人だかりを見る。 先ほどより多くなっている気がする。 「ま、何とかするさ」 できないではなく、やるしかない。 そしておそらく、この野次馬の群れはわざと増やされているはずだ。 凪は登也に声をかけ、野次馬の対応を交代すると、登也と維胡琉は家の中へと入って行くのを見届けた。 「さて」 首の骨を鳴らし、野次馬共を睨みつける。 サーチアイを発動。特に異常は無し。 だが、彼は野次馬の中にいた人物を見逃さなかった。 その男が、拳銃を取り出したからだ。 目にもとまらぬ速さでその男との間合いを詰め、地面へと右手で叩き伏せる。 「ぐはっ!!」 即座に拳銃を取り上げ、男の腕を取り絞めた。 その瞬間、野次馬の動きが止まった。 「ま、参った!悪かった!も、もう扇動はしないよ…」 「…あまり面倒かけんなよ」 凪はその男の顔を確認すると、呆れるようにため息をついた。 そして、男の手を掴んだまま立ち上がらせる。 男は拳銃を取り出そうとしたものの、殺気がまるで感じられなかった。 それもそのはず、確か男は、空と共に先に現地に来ていた灰原という男だったからだ。 「お前らも、中は今本当に危険なんだ。それでも無理やり入ろうとするなら…こいつみたいになりたくなきゃそこで大人しく見てるか、ここから立ち去れよ」 その言葉に、野次馬もおとなしくなった。 さすがに拳銃を持つ男が自分達の中にいたとなると、疑心暗鬼で周りを窺う者、恐怖におびえて逃げる者と、家の中に入ろうとする者はいなくなった。 「とにかく助かったが…その拳銃は没収しておく。いいな?」 「マジかよ…。まあ、後は空達に任せるか…」 どこから手に入れたのか、護身用の拳銃を取られた事に嘆く灰原だったが、凪達の姿を見て任せていられると思ったのかそこで大人しく凪と待機することにしたようだ。 ☆☆☆ 8月18日午後21時45分。 「ん…」 「よかった、空ちゃん目が覚めた?」 空が目を醒ますと、目の前には維胡琉の姿が。 登也が持っていたはずの応急キットで、空の手当をしてくれたようだ。 「向坂さん…。鍵は?」 「あ、うん。空ちゃんが完全に気絶してたみたいだったから、登也君が外から扉壊したんだ」 確かに、気づけば書斎の扉が壊れて空いている。 いざとなったら維胡琉が守ってくれるつもりだったのだろうが、ちょっとやりすぎじゃないか、と空は思った。 体は重いが、動くことを確認すると空は立ち上がる。 「あ、まだ動いちゃダメだよ」 「だいじょうぶ。向坂さんのおかげかな」 おそらく、リバイバルハートもかけてくれたはず。 思った以上に体が動くため、ほぼ体力は戻っている。 「で、登也は?」 「先に三階に行くって」 りょーかい。と表情を変えないまま小さく呟く。 少し不安そうな顔だが、腐ってもハンターのため、今は人命救助を優先という事でそれ以上は維胡琉は何も言わなかった。 「じゃあ私は塩水を作っておくね。ひとりかくれんぼの終了儀式をしなくちゃ」 「ん、そっちは任せる。わたしは念の為、先に2階を見回ってから3階に向かう」 「わかった。早く行ってあげてね、登也君も一人じゃ厳しいだろうし」 「分かってるよ」 二人は書斎から出ると、空は2階、維胡琉は1階のキッチンと移動を開始した。 ☆☆☆ 8月18日午後22時。 「こんなもんかな」 特に誰もおらず、ゾンビやくまと遭遇しなかったため、数分で全ての部屋を見回る事ができた。 しかし、何もなかったという事はおそらくは、どちらかにいる可能性が高い。 それも、悲鳴が聞こえた3階。 マズったかな、と思いながら3階へと上がると、そこには登也が一人でぬいぐるみのくまと交戦中だった。 「空!…起きてるんなら、もう少し早く来てくれなかったかな」 「ちょっと2階も見回ってたから遅くなった」 くまは包丁を持っており、俊敏な動きで登也に襲い掛かっているが、五体満足の登也に対しくまだけでは傷一つつける前に、登也のシヴァフロイラインで凍り漬けにされる。 そして効果が切れて動くとまた同じ行動。これの繰り返しで何とか膠着状態を続けているようだ。 ちなみにスレイプニルを試してみたが、燃えても焦げる程度で完全消滅するまで燃やせなかったため、凍結の方で試していた。 「この後ろに、娘さんがいる。怪我をしてるから、救助したら凪がいる外まで連れてくか、向坂さんに回復してもらってくれ」 「わかった。登也はも少し頑張れ」 再び動き出したくまにシヴァフロイライン。 さすがにここから出した時にくまの凍結が直ったら、登也一人では娘まで守りきる自信がないため、彼は空か維胡琉を待っていたようだ。 空が子供部屋をノックするが開かないため、書斎の登也よろしく蹴り破る。 ベッドの所で、首から血を流している少女を見つけた。 「よし、生きてるな」 このまま放置していると危なかったが、まだ何とかなりそうだ。 自分の服の袖を破り、少女の首に巻き付ける。 あまりきつく締めることができないので、応急処置にもならないだろうが…まあやらないよりはマシだろう。 少女をおんぶして、すぐに部屋から出た。 「俺はもう少し魔力が持つから、ここで足止めする。…今度はできるだけ早く来てね」 「できるだけな」 軽く冗談を言い合い、凍っているくまを横切り、一気に1階まで階段を駆け下る。 1階でこちらに向かってきた維胡琉を見つけると、彼女から塩水の入ったコップを受け取り、登也が3階でくまと交戦中と簡潔に言いそちらは任せた。 「もう少しだぞ」 「うう…」 血を流し過ぎたか、とさすがの空の顔も僅かに険しくなった。 少女の顔は蒼白になってきており、首の血が滲んで止まっていない。 だが、これでもう安心だ。 空は玄関を開け、外に出た。 「このバカ…なんで今来るんだよ」 「灰原と凪…?と」 野次馬はすっかり物陰に隠れてビビっている。 そして魔人化している凪の前には、あのゾンビ。 灰原は足手纏いになるせいか、半分物陰に隠れて凪とゾンビを見ているようだった。 『…』 「…後で弁償か。鬼ヶ原、離れろ!おおおおっ!」 既にハイチャリオットを放った後のようで、無数の打撃跡がゾンビにはあった。 手もおかしな方向に曲がっているが、それでも動きを止めないゾンビに、凪は一気にスターダストを放つ。 ゾンビの腕は吹き飛び、いつの間にか獲物を変えたようで鉄バットごと消滅する。 ゾンビがぶつかった入口の扉も大破し、もう使い物にならないだろう。 「うお」 「…悪いがこれ以上被害を出すわけにいかないんでな」 腕が無くなったゾンビだが、元は人間。 それを意識した凪だったが、彼はすぐに後悔をする。 ゾンビはまだ立ち上がり、口で今度は近くにあったゴルフクラブを咥えたのだ。 「しぶとすぎるだろ…」 「わたしがやる」 だからこの少女は頼む、と言わんばかりに灰原へ少女を押し付けると、塩水を口に含み、コップの水をゾンビの体にかける。 続けてゾンビに口の塩水を吹きかけた。 「わたしの勝ち、わたしの勝ち、わたしの勝ち」 終了手順は、仲間から聞いた通りにやった。 もしこれでも動くとすれば――。 『…ググ…』 「鬼ヶ原!」 「まじかよ…最初が間違ってたとか…?それとも2時間経ったせいか…?」 ゴルフクラブが折れるくらいの強打を頭に受けた空は、世界が揺れるような感覚に陥った。 凪か灰原の叫びが聞こえた気がするが、空の瞼は徐々に閉じられていく。 『グオオオオ!』 「なんだ…?この気配は…くそ坊主か?」 凪がゾンビを訝しそうに見て、すぐに3階を眺めた。 そして意識を失う空が最後に見たのは、ゾンビが消滅していく場面だった。 ☆☆☆ その後、意識を取り戻した空は病院だった。 隣には助けた坂木の娘がいて、自らも頭に包帯が巻かれていたが、空の方はそこまで酷い怪我ではなく、ただの脳震とうらしい。 結局どうしてゾンビが消えたのかはわからなかったが、空が気を失うのと入れ違いで維胡琉と登也が3階から来たらしい。 それによれば、くまは維胡琉が塩水をかけて空と同じ手順でやれば、元のぬいぐるみに戻ったそうだ。 じゃあゾンビにも効いたのだろうか。 そうは思えなかった。時間差で効いた可能性も無いとは言えないが、やはりどこか腑に落ちない。 「お父さん…」 「…ま、いっか」 あれから坂木家では変な事は起こらないという。 本当の解決ではないだろうが、事件は無事に済んだのだ。 隣の少女の安らかな寝顔を見ていると、そう思えた空だった。 ―END―
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/234.html
魔物詳細第四階層・冥府の階層 ※☆はレアモンスター、▼はエリアボスとなる。レアモンスター撃破で煌石+1、エリアボス撃破でエリア攻略となり、攻略したメンバーに報酬が入る。 ※●印のエリアは、◆のエリアを全て攻略しないと進むことができない。 ※攻略済みの場所は、エリアボスが出現しなくなり、報酬も得ることができなくなります。 ※攻略後の場所への再探索は、エリアボスの代わりに通常魔物が1体、ランダムでエンカウントします。 ◆腐臭漂う高等部(攻略済み) 神風学園高等部。のはずだが、なぜか腐臭が漂っている…。 BOSS:始祖の悪魔タイニーデビル 攻略メンバー第一回:日野守桜・鬼ヶ原空・甚目寺禅次郎・九重匠(同行者) ※追加報酬:同行メンバー真田斎追加 ●魔女の学園(攻略済み) 神風学園大学部。のはずだが、なぜかあちこちに魔力の術式が施されている…。 BOSS:魔犬ガルヴァ(ポイント10突破)・魔手ゴルゴーン(ポイント20突破)・始祖の悪魔クラリス(最奥) 攻略必須メンバー:志島武生(最奥のみこのメンバーがいないと探索ができません/ポイント20まではいなくても進むことは可能) 優先メンバー:桐石登也・白神凪・甚目寺禅次郎(最奥のみ/ポイント20までは優先にされません) 攻略メンバー第一回(ポイント10ごとに1万円追加):烏月揚羽・藤八沙耶・柳茜・天瀬麻衣・鎮守由衛(同行者) 攻略メンバー第一回(絶対に一回目のPCでは突破できないため):白神凪・桐石登也・志島武生・蒼氷カノン(同行者)・北嶺真帆(同行者) ※追加報酬:同行メンバー水鏡流星追加 虚空の次元(攻略済み) 様々な空間と繋がっている異次元空間。最奥でベレトが待っている…。 BOSS:悪魔ベレト 攻略必須メンバー:向坂維胡琉(このメンバーがいないと探索ができません) 攻略メンバー第一回:六角屋灼・東雲直・向坂維胡琉・福良練・水鏡流星(同行者)
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/189.html
依頼日【2015.8.2】 参加メンバー:烏月揚羽、向坂維胡流、桐石登也、甚目寺禅次郎、入生田宵丞 依頼内容:神嶽山(みたけやま)の5~8合目の森の中に生息する、コブコブラという毒蛇の捕獲。 終了までの過程: 早朝5時に蒼ギルドのロビーに集合。受付女性から地図と依頼の詳細書類を確認。 依頼主の「レストラン雅」の木田さんから、依頼内容と毒蛇であるコブコブラ捕獲についての詳細や注意事項を 確認。ブレス持ちがいなかったので、受付女性から解毒剤を受け取り(料金は報酬から差し引き…)出発。 捕獲用のケージは烏月さんと桐石が運ぶことに。 山の麓まで車で移動した後、1合目の山小屋前に移動。 送ってくれた受付女性と別れ、山小屋のお婆さんへと挨拶をした後に2合目へ移動。 2合目には赤い瓦屋根の小さな神社が建っており、掃除をしている神主らしきお爺さんを見かける。 どうやらここではコブコブラは神の御使いとして大事に祀られているらしく、「捕まえたりしたら」と聞いただ けで激昂。 後に聞いた話によると、山のふもとの村で流行病が起こった時、巨大な白蛇が現れ毒を吸い上げて助けてくれた んだそうな。白蛇は毒を宿し毒々しい姿へと変えて山に帰ったらしいけれど、その後は流行病も止まり大きな厄 災はなかったとか。…コブコブラが神の御使いと祀られるのも頷ける。 3合目からは獣道のようになっており、4合目からは更に森深く険しい。 道中木々の棘で多少の怪我はあるったものの5合目に到着。 更に森深く草木が覆い茂っていたが、こちらは棘のある植物はない模様。 5合目からコブコブラが出るとのことで、毒蛇の出現率の高さを狙って7合目で探索。 人間と変わらないほどの大きさのコブコブラを発見し、奇襲を仕掛けようとするも失敗。ただ逃げられることは なく戦闘開始したので、これはこれで好都合だったかもしれない。サーチ持ちがいなかったので来る前に聞いて いた体力と毒蛇の大きさを見遣って予想しながら(一番大きなもので俺の10人分の体力だそう)様子を見つつ皆 で攻撃。コブコブラはこぶに毒が入っているらしく、刺激して凹むと毒素が回るらしいが、特にこぶを攻撃して しまうこともなく、また烏月さんが弱点である腹部に2連続で攻撃してくれたことで、うまく毒蛇を弱らせて捕 獲することが出来た。 帰り道は毒蛇の入ったケージを自分が持ち、皆に先導してもらったり、行きの神社であった神主さんに気取られ ないよう意識を逸らしてもらったりと一気に下山。朝送ってくれた受付女性に連絡して迎えに来てもらい、無事 にリニアを乗り継いで粥満のレストラン「雅」へと到着。 結果: 捕獲したコブコブラを依頼主へと渡せば、予想より大きかったらしく満足してもらえた様子だった。報 酬も上乗せしてくれるとのこと。 上機嫌な様子と次の注文が入ればまたとの声に、今回の依頼は良い結果だったと思っていいだろう。 補記:蒼ギルドより解毒剤を借出、未使用にて返却(確認済) 記入:甚目寺 禅次郎 受付補記:泉谷大地
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/270.html
エピローグ~one year later…15~ 日差しも強くなってきた季節。 豪華客船エルスール号特別客室。 此処はVIPの客が宿泊する場所で、蒼氷カノンはそこにいた。 飛鳥軍臨時外交官として。 「おや?どうしました蒼氷外交官。この船はお気に召しませんかな?」 「アセド外交官…。いえ、エスタルド領に入るのは初めてのものでして…緊張、しているだけです」 「ハッハッハ、どうか寛いでください。飛鳥帝国、メロウの港を出港し3日。後2日は到着にかかるのですからな」 旅客船での片道が5日。 その長旅の先に、西大陸南部のエスタルドと呼ばれる、小さな島国がある。 現飛鳥帝国皇帝、ヒース=べルジェラックの2代前の皇帝の時に、隣国の脅威により同盟国である飛鳥国へ支援を頼んできた国だ。 その後エスタルドの隣国を飛鳥軍が追いやった後に、飛鳥軍が和親条約を結ばせ、永久的な保護と理不尽なくらい高額な関税を先代の皇帝の代まで行ってきたのだ。 『蒼氷大尉、貴殿はこれより臨時外交官としてエスタルドに赴いてもらいたい』 謁見の間。 その場で、皇帝ヒースの立ち合いの下、飛鳥宰相により告げられた任務。 『3つの任務を与える。1つ、近年エスタルド軍が大規模な徴兵を行っている。 愚かにもこの飛鳥帝国へ攻め入ろうという噂があるのだ。貴殿にはその真偽を確かめてもらう。』 エスタルド軍といえば、西大陸の軍人でもかなりの練度で有名な軍だ。 西大陸と言えば、大和でいうハンターのように傭兵が主流であるが、エスタルド国は傭兵参加を認めていない。 それどころか、一人のエスタルド兵が傭兵の高ランクをも討ち取るほどの実力者揃いだ。 飛鳥の軍人はその更に上をいくが、それでもそんな者達が飛鳥に攻め入るという不穏な情報があれば…その真偽は確かめねばならないだろう。 「蒼氷外交官」 「はい…?」 ふと考え込んでいると、アセド外交官が鋭い目つきでカノンを見る。 すぐに笑みへと変え、話を続けた。 「お疲れならば、お休みになってください。なんなら、後で酔い覚ましを持ってきましょう」 「いえ、お気になさらず。ですが、そうですね…少し、休ませてもらい、ます」 「ええ、その方がいいでしょう。それでは、ごゆっくりお寛ぎください」 アセド外交官は一礼すると、特別客室から出て行った。 アセド外交官。外交官と言っても、カノンと同じように軍部出身で、外交官に相応しくない体格の屈強な男だ。 エルスール号へと乗船し3日。 未だ、アセド外交官が読めない。 「鍛錬不足、ですね…」 ため息をつき、窓の外を見る。 月が陰り、薄暗くなっていく。 雲の動きが早い。嵐が来るのかもしれない。 この辺りの海域は、突如暴風雨が吹いてくるため、難破する船も少なくない。 その嵐をティフォーンとエスタルドの漁師は呼んでいるようだ。 『2つ目の任務。それは、行方不明の白鷲外交官の調査だ』 『確か、エスタルドの飛鳥大使館の…』 『うむ。彼がここ1ヶ月程、連絡を絶っている。エスタルド側に問い合わせると、調査中との反応しか寄越さない。 そこで、現地に赴いた時に安否を確認してきてほしい。 1つ目の任務が事実であるのならば…既に、白鷲外交官は生きてはいないだろう』 白鷲外交官。 前任の宰相の下で政治学を学び、先代の飛鳥皇帝にも重宝されていた外交官だ。 マメな性格で、月1どころか2週に1度報告を行うほど、連絡を欠かさない。 その彼の最後の通信が先月。 それも、エスタルドが軍事拡張を行っているという情報が最後らしい。 その後2回、一般客と共に飛鳥の軍部関係者を向かわせたが、2回ともティフォーンにより難破。 その軍部関係者の安否も分かっていない。 だからこそ、今回は臨時外交官として堂々と、豪華客船へと乗船手続きを行った。 このエルスール号は飛鳥~エスタルド間を繋ぐ船で、非常用のアイテムも多数揃っている。 もちろん、飛鳥軍が使用している、水中で息ができるアイテムも備えてある。 回想を終え、カノンはベッドへと横になった。 此処にはカノンのみ。 カノンの仲間は、一般客室での乗船手続きとなっている。 「そろそろ、出てきたらどうですか?」 なので、今は仲間がこの部屋にはいない。 暗殺を行うには絶好のチャンスなのだ。 いつの間にか部屋に侵入を許したのは、鍛錬不足としか言いようがなかったが、カノンは気持ちを切り替え近くに置いてあった槍を手にする。 「フ…どうやら勘はいいようだ」 おそらく最初から気配を殺して潜んでいたのだろう。 黒いローブに頭まで包まれた者が、カノンの目の前に姿を現した。 外国語で独特の口調ではあるが、口調からして、カノンと同じくらいの若い男だろうか。 殺気こそないが、二本の曲刀を構えたローブの男。 エスタルドの軍人が使う、剣術の一種だ。 カノンは外国語に切り替えながら、相手へと尋ねた。 「一体、何者です…?」 「エスタルド軍機密部隊、トルナード二等兵だ。天瀬麻衣…貴様にはここで死んでもらう」 丁寧に名乗った暗殺者にずっこけそうになりながらも、槍を強く構えたカノン。 構えから腕は立つのはわかるが、どうやらおっちょこちょいな暗殺者のようだ。 しかし、訂正すれば麻衣に危険が及ぶのは必至。 ならば、ここで何とか対処する必要があるだろう。 「ふむ…魔術のみ…と聞いていたが、どうやら古い情報だったようだ。しかし…」 「!?」 カノンに切りかかるトルナ―ド。 彼はカノンが槍で刃を防ぐと、そのまま曲芸師のようにつばぜり合いをしたまま宙返りし、彼女の背後に回り込んだ。 「お前が勝てない理由が2つある。その1、ここでは広範囲魔術は使えない。もし発動し船に穴でも空ければ、こんな大海原のど真ん中で他の乗客への迷惑になるからだ」 「くっ」 相変わらず人物を間違っているようだが、カノンも広範囲魔術が多い。 かと言って狭い客室の中では、簡単な魔術でもカノンの魔術の威力なら簡単に船底に穴が空くだろう。 ターゲットロックして、トルナード以外に当たらないようにしようにも、彼の動きがトリッキーすぎて魔力を合わせる事ができない。 「その2、10分間は我が仲間がお前の仲間を足止めしているだろう。つまり、10分以内にお前は死ぬ」 「だったら残念、そのお仲間は1分で倒しちゃったんだなこれが!ブラックドッグ!」 銃弾がローブを貫く。 足と腕、急所は外した。 桐石登也が特別客室の扉を蹴り開けて、カノンの援護射撃を行ったのだ。 「成る程、評価を改めなくてはならないようだな!」 ローブの中へと曲刀を腕と足に回し、銃弾を防いだトルナード。 その後ズバッとローブを切り裂き、ローブの下も黒尽くめのラフな格好を晒した。 「さすが、ただの暗殺者じゃないな…!」 「当たり前だ。エスタルド軍機密部隊は任務遂行のために血反吐を吐いて日々訓練を積み、他国に遅れを取らぬよう精進している。その程度の攻撃で倒れる程――」 「ありがとう、ございます、登也さん」 突如動かなくなった体に驚愕の様子を見せる男。 見ると手足が凍りついて動かなくなっている。 部屋全体の気温が急激に低下している事に気が付いた。 カノンが魔術で、辺りを自分の意のままに凍結させる結界を展開したのだ。 「ふむ…地味だがこの上ない一手だ。さすが結界使いなだけはある」 「それはどうも。四肢を完全に、使い物にされたくなければ、降伏してください」 「チェックメイト、だ」 大気の氷を操るべく、手のひらをトルナードに向けるカノン。 それを見て銃口を向け、自分がよくチェスを行う、一度だけ引き分けに持ち込めただけで後は全く勝てず、その時と同じような台詞で煽る登也。 男はため息をついた後、両手を挙げた。 「まあ…やはり使わなくてはならないか」 「…何を?」 「…!カノン、構わねぇ!死なないように全身凍らせろ!」 登也が何かに気付いたように叫ぶが、男は薄く笑う。 そして、右肩の服が浮き出てきた赤く光る痣により破かれた。 登也はこれを良く知っている。 なぜなら、彼やカノンと共に同行している人物が持つ『聖痕』と呼ばれる痣と同じ痣だったからだ。 「もう遅い。アンタッチャブル解――」 そう叫ぼうとした時、船体が大きく揺れ90度傾いた。 聖痕を解放しようとした男は、そのままバランスを崩して壁に激突する。 「なんだ…!?」 「登也、さん…!」 カノンが指さす外の先を見ると、船体の外に大きな渦潮が現れている。 その渦潮は竜巻を発生させ、エルスール号を引き寄せているかのようだった。 「ティフォーン…い、いやあれは――」 男、トルナードがそう呟いたのが、この船の最後だった――。 ◆蒼氷カノン 異次元帰還後、様々な任務をこなし半年で大尉に上り詰める。 そして今回の重要な任務を託されたが、この事件で5ヶ月の間、消息不明となる。 その後無事に帰国した時は、エスタルドの情勢も彼女達の手で解決し、その功績を認められ少佐にまで昇格したと言う。 飛鳥支部へと移籍した桐石登也とは婚約を交わしている間柄で、叔父である蒼氷リオンの家で登也と共に同棲中。 ☆ 暗闇の中、二人の男女が蝋燭を灯し、一つのテーブルと二つの椅子にそれぞれ腰かけている。 『貴方はもうこの世界にいない』 『ならば、こんな世界壊してしまおう』 『―――のために。来世でまた一緒になるために』 ☆ 薄っすらと目を開けると、そこには天瀬麻衣の先輩、烏月揚羽が心配そうに麻衣の顔を覗き込んでいた。 「マイティ、すごいうなされてたよ?大丈夫!?」 「…平気です、先輩…水貰っても良いです…?」 「あっ、まだ船酔いしてんだ!?ごめんごめん、今もってくるねー!」 水をちょうど切らしていたため、慌てて厨房へと走る揚羽。 その姿に僅かに笑み、疲れた溜息をついて再度目を閉じる。 「一口飲んだやつでよければ…飲む?」 「…ええよ、こうしてると少し楽になってきたし。志島は酔わないん?」 「まあ、船旅は慣れてるんで」 自分が飲んでいた水を差し出そうとしたが、断られたため引っ込める志島武生。 そして行ってしまった揚羽が出て行った開けっ放しの扉をじっと見て、立ち上がり閉める。 少しの間、沈黙が流れ。 「そういえば、天瀬さんは聖痕の事で今回の依頼を受けたんでしょ?」 沈黙を破ろうとしたのか、それとも興味があったが聞き出す機会が無かったのか。 武生がそう尋ねると、麻衣は上体を起こし、きょとんとして。 「そうやけど…その口ぶりだと、志島は違うん?」 「…まあ」 「…そう。言いづらいなら言わなくてもええよ」 「いや、そんな訳じゃないけど。エスタルドを含めた西大陸の南側8ヶ国に、まだ一度も行ってなかったから。FMXって、西大陸の中でも南の国が一番盛んだからさ」 へえ、と相槌を打ちつつ、乗船時に武生は自分のバイクを積み荷としていた事を思い出す麻衣。 暫し沈黙の後に、付け足すように武生が話を続ける。 「まあ、南部が一番戦争が少ないからっていうのもあるけど。エスタルドはFMX自体流行ってないらしいから、布教も兼ねて、かな」 「ちゃんと下調べしてるん?偉いね」 「そんな事ないよ。…それに、水鏡さんらしき人の目撃情報もあったから」 最後の言葉に、麻衣は少し驚いた顔をして見せたが、そっか、と優しく笑い。 行方不明で死亡説も流れてた水鏡流星。 その彼を見かけたというのが事実なら…最近色々といい噂を聞かないというエスタルドに、何の用だったのか。 そもそも、エスタルドに用があったのか。 「天瀬さん?」 「ん、何でもないよ」 「マイティ!水、持ってきたよ!!」 勢いよく扉を開け、水を持ってきた揚羽が客室へと入る。 どうも、と水を受け取ると、このまま飲まないのも悪いと思い、麻衣は一口水を飲んだ。 此処は5人一間の客室で、麻衣、登也ともう一人、今回のカノンの任務にハンターとして護衛依頼で同行している。 特殊な事情としては、揚羽と武生か。 揚羽は麻衣に頼まれて。 武生はハンターを既に辞めていたが、先日偶々大和のカーネリア大聖堂で登也と会った時に、声を掛けられたのだ。 ハンターを辞めているため既に武器は解体し、魔術ももし使用した事が発覚したら、ギルドに違反扱いを受けるだろう。 そのため断ろうとしたが、FMXや行方不明の水鏡の事もあったため、結局引き受けてしまった。 そんな異色な組み合わせではあるが、過去にハンターを行っていた者や現在進行形でハンターの者を乗せた船が港を出港し、既に三日目。 海を見るのも飽きてきたところで、麻衣は船酔いしてしまった。 気を紛らわそうと会話を続けようとして、揚羽に声をかける。 「それにしても先輩、よく同行できましたね。今手配されてるんやとてっきり…」 「されてるよ?」 「…ああ、だから出港の時にコソコソとしてはったんですね…」 「…今回は軍人に話いってたと思うし、スルーされてそう」 武生の指摘通り、今回は揚羽は見逃されている。 もちろん、揚羽自身もその事はよくわかっていた。 だからこそ出港時の見送りも、こっそりと久遠が来ていたくらいで、飛鳥では悪い意味で有名人である契や祈那は顔を出すことができなかったのだ。 ともあれ、その二人の伝言も久遠からきっちりと聞いていたのが救いだったが。 「さっすがカタメ!いい王様だよねー!」 「でも、蒼氷さんは任務だしわかるよ。俺達も依頼で関係者繋がりでわかるんだけど…天瀬さんだけなんで確実に頭数に入ってたの?」 「…それはうちが聞きたい。…まあ、これなんやと思うけど」 麻衣は、自身の聖痕のある位置を指さした。 それはそうだけど、と先ほども理由を聞いた武生は更に尋ねて。 「なんで天瀬さんなのかってこと。そんなに聖痕に関係するような、物騒な依頼なの?」 「だからアタシ達が聞きたいんだってっ!ね、マイティ?」 「うちに振らんでください」 そうしたやり取りを続けていると、客室の扉が再度開いた。 5人目の彼らハンターのサポートを行うべく、大和粥満から出張してきた諏訪戒人だ。 「天瀬麻衣、起きていても大丈夫なのか?」 「お蔭さまで。ご迷惑おかけしました」 「フ、迷惑など掛かっていないさ。まだ二日はかかる。ゆっくり休んでいるといいだろう」 それだけ言うと、戒人は踵を返してまた部屋から出て行こうとする。 見回りを買って出てくれているが、さすがに何度も部屋を出入りされても落ち着かない。 なので麻衣が呼び止めると、彼は一つ息をついた。 「お前達はここに居ろ」 「あ、ちょっと待ってよっ!」 揚羽が戒人の後を追おうとしたが、麻衣に呼び止められて躊躇した後、自分の席へと座った。 あくまで今回の目的は、蒼氷カノンの護衛と天瀬麻衣の護衛。 もっとも既にハンターではない彼女には受ける必要のない依頼だが、可愛い後輩の頼みであり祈那や久遠、契の承諾を得ているため、麻衣の側にいる事が彼女の使命でもある。 「ま、あの人なら問題ないんじゃない?Aクラスハンター並みの実力はあるんでしょ?」 「それはそうなんだけどさー…」 武生の言葉に、尚も納得がいかない様子の揚羽だったが、それは突然の大きな揺れによりすぐに忘れる事となる。 辺りが突如揺れかと思えば、この船、エルスール号が傾いていた。 「な、な、なにっ!?地震!?」 「違う、なんだあれ…?」 外の景色を見ると、渦潮の中心に巨大な竜巻が発生している。 その中に、黒く大きな影が見えた。 「あ、く、ま」 麻衣が呟いた瞬間、彼女の聖痕が赤く光り疼き出す。 今までにないような痛みが走り、揚羽や武生が彼女に声をかけているが、その声は遠く。 なぜか、麻衣はカノンにこれだけ教えられた、3つ目の任務を思い出していた。 彼女がそれこそ諏訪戒人に天瀬麻衣指定の依頼だと告げられ、受けた依頼の内容とも被る。 『蒼氷カノン。最後の任務は余が直接伝える。他の者は鳳中佐以外下がるがよい』 ヒースがそう告げると、カノンと鳳中佐だけがその場に残った。 『…貴様に与える3つ目の任務。それは――』 『3体の強力な悪魔の一柱、『永久のルーファス』の調査、だ。大和のハンター、天瀬麻衣を連れ任務に臨むがよい。ハンターギルドには既に話は通してある』 その悪魔は、聖なる痣を付け、自分の眷属を増やしていくと。 そしてそのまま、天瀬麻衣の意識は闇に途切れた――。 ◆諏訪戒人 異次元帰還後、いつも通り粥満のギルド員の役割に戻る。 しかし、今回の一件により飛鳥ギルド側の要請もあり天瀬麻衣に同行、そのまま彼女や蒼氷カノンらと共に5ヶ月の消息が不明となる。 ◆派手な男 異次元帰還後、稀にバウンティハンターとして飛鳥で活動している所を目撃されている。 ☆ 時間は戻る。 パチパチと火花の散る音で目が醒めた天瀬麻衣は、辺りの状況を確認した。 焚き火がされており、諏訪戒人が麻衣の傍にいる。 「気が付いたか、天瀬麻衣」 「…ここは…?」 「分からない。ただ、どこかに漂着したようだ」 少し山々に囲まれた山道らしき道の外れに、焚き火をしている二人。 他に人の気配は無く、どうやら戒人と二人きりらしい。 「…烏月揚羽と蒼氷カノンは、先行している。他の漂流した者達を連れてな。どうやらここから先、暫く行くと集落があるらしい」 「先輩達は無事やったんですね…。集落?」 言われて麻衣が遠くを見ると、明かりがついている町のようなものを見つけた。 「他の漂流者だけでなく、意識がないお前を連れて行くのは困難と判断した。 だからあの者達には先行してもらい、俺はお前だけを護衛させてもらうことにしたぞ」 「そう、ですか。ありがとうございます」 「礼には及ばないさ。…今日はここで野営する。構わないか?」 う、と一瞬たじろぐが、他にどうしようもないし戒人の提案を受け入れた。 幸い、戒人がほぼ見張りをしてくれるという事なので、1時間だけ途中で交代し、残りは夢の世界へと入って行った――。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/191.html
8月19日午前10時30分。 「くそっ…!!」 うねうねするモノを睨みつつ、とてもじゃないが動けそうになかった深海将己は全力で走り、うねうねと距離をとった。 息を切らしながら全力で走ったためか、なんとか村の近くまで逃げ切ることができたようだ。 頭痛も治まり、どうやらうねうねしたモノもおってきてはいない。 「助かったのか…?」 またすぐ後ろにいたりするのでは、と半信半疑で辺りを念入りに確認する。 だが、何より深海自身の具合が悪くならない事が証拠になるだろう。 気を取り直して、深海は村へと向かって歩き始めた。 ☆☆☆ 8月19日午前12時。 『深海君無事ですか?まずはそちらが知りたがっていた2つから。 一つ目、山田太郎さんは偽名でなく実名でした。 蒼のギルドで確認をとってもらったので間違いありません。 彼はこの辺の安全区域で、一人で農家を営む方のようです。 また二つ目は日下部地方について。 ネットのホラー系のアングラサイトで調べたのですが、日下部に迷い込んだという人がちらほらといるといった書き込みがありました。 鬼と書いてきさらぎと読むとか、きさらぎに行ったらもう戻ってこれないとか、水を飲んだりその場所にある物を食べたりすると、その空間とのつながりが強くなり帰ってこれないなど、嘘か本当かわからない内容まで様々で混乱するかもしれませんが、一応手がかりになるかもしれないので書いておこうと思います。 帰ってきた方の証言によれば、なんかいつの間にか帰ってきてた、とかトンネルを抜けたら帰ってきた、親切な人に案内されてたら気づいたら戻った、帰るまで30年かかった、などの書き込みがありました。 うねうねに関する内容もあったので、以下にコピペしておきます。 【う/ねう/ねって知ってるか?】 1 名無しのホラー百選:2015/07/21 う○うねって知ってる? なんか理解すると死ぬってやつ。 2 名無しのホラー百選:2015/07/22 おまww 口に出すと死ぬぞww 3 名無しのホラー百選:2015/07/27 レスがねえww 死んだかな1はww 4 名無しのホラー百選:2015/07/30 1だけど生きてるってw なんかさ、友達と肝試しで蒼の山中のそれっぽい所に行ったんだけど、マジで怖かった。 うねうねしたものが、動物の体から出てきてんの。 もう一目散に逃げたね。 逃げたといっても山道仕様の車だったけど。 5 名無しのホラー百選:2015/08/02 マジでやめたほうがいいよ。 俺の友達が見たらしいんだけど、なんか飛鳥で流行った寄生虫の超巨大バージョンだとか。 なんでそんなでかいのか知らないけど、頭痛くなって、気づいたら近づいてきてるってさ。 そいつ? 死 ん だ よ。 下山してから、俺にその話をしてきて2時間後にね。 だからマジでうねうねはヤバイ。 …という事みたいです。 飛鳥の寄生虫については、少し時間がかかると思いますが私の方で調べてみましょう。 さて、これから例の山に頼まれていた穴掘りに向かうので、暫くレスが遅くなります』 「穴掘り…ああ、そういえば」 深海はメール内容を見つつ、眉間に皺を寄せた。 彼が城ヶ崎教授に送った内容の一部で、以下の通り頼んだ事がある。 「最後にあの墓石について。 「御」の字しか読み取れませんでしたが、『人身御供』と彫られていたかもしれません。 もし奉られてる本体に許可取れたら、掘り起こして貰えません?」 と。 送信内容を見つつ、いやいやいや、と口元が引きつった。 「まだ許可とってねーし」 止めておくか、と思った矢先、背後から「別にいいよ」という声が聞こえた。 息を一つ吐き、振り返る。そこには例の少女がいた。 既にここは村間近。 幸い、村人は外に出てるものはいないため問題ないが、あんまり堂々と話しかけるのはやめてほしいと思った。 「なぁ、お前って何なの?」 「何なの?ってどういう意味?」 「人身御供にされた子供の幽霊か?」 その言葉に、少女は考える。 そして、違う、と言った後に。 「けど関係はしてるかな。生贄になった子達は、私への供物でもあったから」 「…五大神…」 深海は呟く。 五大神の少女、という蒼の少女。 おそらく目の前にいるのはそれでほぼ間違いないだろう。 詳しくは教えてくれないが、肯定と言わんばかりに少女は笑みを見せた。 「長く、この村の人は信仰してた神を間違えてたの。 それが50年前の悲劇を生んだ。 渡来した寄生虫は、呪いの力によって大きくなり、そして知能を持った。人間くらいには考える事ができるはずだよ、あの寄生虫」 「はぁ…?いや、でも確かに…」 諦めるのが早かったり、自分の背後にいつの間にかいたり。 あの存在はそういう感じのものだった。 「私がお兄ちゃんの前に現れるのも、次で最後。 でも、その最後はお兄ちゃんが死ぬ瞬間だよ。 だから、もう会えないといいね」 微笑む少女は、すうっと消えていく。 深海は咄嗟に、消えていく彼女に声をかけた。 「せめてどうやったら助かるかくらい言ってけよ!」 「……」 最後に、彼女は何かを言っていた気がした。 口の形が、お行、お行、い行の3文字。 何かは今はぱっと浮かないため、先に村の調査をすることにした。 その矢先、深海の携帯がバイブレーションする。 村人に気づかれないように、念のためではあるが…意外と静かな場所だとバイブの音も結構聞こえるものだ。 烏月揚羽が、他の二人のハンターの内容を纏めて送ってくれたようだ。 まずは入生田宵丞から。 「成果無し」 緋杭湖の寺で色々と調べてみた彼だったが、住職は他方の檀家の家に向かっているため、小僧と話をしたが彼らでは何もわからず、結局無駄足になった。 続いて天瀬麻衣、揚羽と続いたが、彼女らもハズレ。 麻衣はハズレではなかったのだが、蒼の五大神の少女は、日下部地方で祀られていた、という事を東十常一から聞いたらしい。 結局、既に知っている情報のため、特に役に立つ情報は無し。 ため息を一つ吐き、まずは墓地近くの井戸から確認を始める深海。 家の壁には穴があいており、そこから中を確認する。 「~~○×△~」 「うっ…!」 頭が痛くなる。 中にいる村人は、くねくねと踊りながら何か意味不明な事を口走っている。 録音しようかとも思ったが、これ以上いると気が狂いそうになるため一旦離れる。 想定外なのは、狂って襲いかかってくる、というわけではなく村人の存在そのものがうねうねを理解するきっかけになりそうなことだ。 次に大きな家を探す。 そこは誰ひとりおらず、土足であがると色々と見て回る。 といっても茶の間とトイレ、玄関、寝室くらいしかない。 ほかの場所には何もなかったが、茶の間では古びた資料を見つけた。 その資料には、人身御供として生贄になった者の名前や、呪いを高める方法、という内容が書かれていた。 そして、遂に深海は希望の一文を見つけた。 『呪い返しについて』 人身御供によるこの呪いには、欠点が一つある。 それは呪い返しだ。 この呪い返しにより、便宜上うねうねと呼ぶモノとの繋がりは弱体化し、うねうねの呪いが一時的に遮断されてしまう。 こうなるとせっかくの生贄にも簡単に抵抗されてしまう。 元々弱い寄生虫なのだから。 そのため、絶対に祭場にある石は動かさないようにしなくてはならない。 「祭場…?どこにある?」 資料の続きを読もうとした時、深海は背後に気配を感じた。 そして…振り返った時は既に遅かった。 ☆☆☆ 8月19日午後13時。 「あ~もう!埠のヤツむかつくっ!全然取り合ってくれないんだよ~?」 『センパイ、愚痴言うために連絡してきたんです…?』 電話口の向こでグループトークしている麻衣と入生田に愚痴る揚羽だったが、この中で有力な手がかりがあったのは麻衣だけ。 それも、既に深海は知っていた内容だった。 『それにしても、天瀬さんどこで仕入れたんす?俺は誰も知らないの一点張りだったんですけど』 『ちょうど美術館で、東十常さんと会えて。そこから蒼の五大神の少女のくだりを聞いたんよ』 『ああ、俺も応対してくれたボーズさんが、少なくともここのお地蔵様はそんな大層なものではない、と言ってたっす』 「マイティだけじゃなくしょーりゅーも…あたしだけなにも情報無し?」 『神社で何も聞けなかったんです?』 「そーなの、なんかカラシがどーとか言ってたけど、うねうねと何も関係ないしさー」 『俺も色々聞きたいこととかあったんすけど…くさかべの事とかきさらぎの事とか』 その時、あ!と思い出したように揚羽が声を上げた。 携帯越しの入生田と麻衣の耳には、ガサガサと紙を開く音が聞こえた。 「そういえば、神主さんが魔除けの札をくれたんだった!」 『…それをどうするんです?今から深海さんの所に持っていきます…?』 『教授に頼んでみるって手もあるんじゃないすか』 「そーだね、今から行くとなると時間かかるけど…」 『深海さん、それまで何も無ければええですね』 「ちょっと、マイティ不安になること言わないでよ!」 ☆☆☆ 一方、同時刻。 目を覚ました深海は、小川にいた。 取り急ぎ、ふらつく頭でやろうと思っていたことをする。 桶が無いため、ペットボトルを何とか半分にして、その中に魚を入れようとした。 その時、汲んだ水にうねうねしている小さなものが見える。 「うおっ!?」 慌てて深海はペットボトルを落とし、距離を取る。 同時に、頭が痛くなってきたからだ。 だが、それと同時になんとなくわかってきた気もした。 「呪い…か?」 最後に少女が言った言葉。 そして、麻衣とやり取りをしていた時に感じた、何らかの気配。 ここまで小さいものではないが、よくよく探ればうねうねした物と似ている。 もし、あの時感じた気配が、元凶だとしたら。 その元凶は、どこにいるのか。どこからやってきているのか。 おそらく、それが分かれば。 そこに行けば、何かが分かるのかもしれない。 しかし、その時だった。 慣れてきた軽い頭痛と共に、遠くにうねうねしたものが見えるのだ。 2,3。 いや、5,6。 どんどんうねうねした物体は増えていく。 深海が瞬きをすると、空に浮いていたり増えたり、減ったりと定まらない様子だ。 幻覚。 深海の頭によぎったのはそれだった。 「またかよ…!」 いい加減ウンザリするくらいの発生率。 しかし、逆を考えれば毎回この小川にこのうねうねは発生している。 逆を考えれば、この小川に何か手がかりがあるとでもいうのか。 だが今はそんな事を考えている暇はない。 頭痛が治まってきたと思ったら、今度は意識が朦朧としてくる。 立って走ることはできそうだが、見ている物が支離滅裂な現状、どこに向かって逃げるのかにもかかってくるだろう。 ☆☆☆ 深海…HP190/MP65/OP41/状態:疲労(探索時や怪異に遭遇時、HP・MPの減少速度が早い)